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【授業レポート】PBLの入門編「商品企画」を体験する

公立高校2年生(5クラス)向けに、PBL(Project-Based-Learning)の入門編として、商品企画を体験する全5コマの授業を行いました。5人のキャリア教育コーディネーターが1クラスずつファシリテーターを担当し、学校のニーズをお聞きしながら授業を企画しました。

●楽しく考えられる題材で思考フレームを身につけよう

全5コマという短い時間の中で、どこまでできるようになることをめざすのか。「ねらい」をどう絞り込むかについて、先生たちと意見交換を行いました。「決して勉強ができる子たちではありません。あまりむずかしいテーマでは、取り組めないかもしれません。」・・・当初、先生からはそんな懸念の声も聞かれました。ですが、ふだんの生徒たちは「活発でノリの良い部分もある」とのこと。まずは、身近で考えやすい題材でおもしろがれたらいいですね、というところから、「コンビニスイーツ」を題材として扱うことに。身近な題材を通して、商品を企画する際の「ターゲット」「ニーズ」「アイデア」という思考フレームを使いこなせるように(定着できるように!)というところを「ねらい」に設定しました。

*全3回の流れ。登場する思考フレームは1つだけ。同じ思考フレームに繰り返し取り組む流れに。

●自分とは遠いターゲット設定で「他者の視点で考える」体験

ターゲットは、以下のような6つ。「高校生とは遠いけど、年齢・性別に加えて趣味や周辺情報を提示することで、生活を想像するヒントを作ろう」と、ファシリテーター(キャリア教育コーディネーター)がアイデアを出し合いました。どのグループがどのターゲット向けの商品を考えるかは、くじを引いてもらって決定。生徒からは「えー!どんな人たちなのか、全くわからないー!」という声も・・・ただし、思考フレームのうち「ターゲット」については、自分たちとはやや遠い年齢や生活の人たちを設定。こうすることで、全く違う他者の視点で考える、相手の立場に立って考えることができるようになってほしい・・・こんなところも、もうひとつの「ねらい」としておくことにしました。

●アイデアは「発散」と「収束」をわけよう!

商品企画を考える際には、アイデアを「まずは自由にたくさん考える」という「発散」のフェイズと、それらのアイデアを取捨選択していく「収束」のフェイズにわける流れに。しかし、この「フェイズをわける」ということが、生徒にはなかなかむずかしい。せっかく出てきたアイデアをすぐに否定してしまう、いいアイデアじゃないから「言わない」というシーンが多くみられました。まずは発散させるにはどうしたらいいか、ファシリテーターが最も苦労したのがこの点でした。ターゲットの生活を具体的に描く「ペルソナ」の方法を伝えたり、アイデアを広げるヒントを出したり。「どんな商品名だったら、ターゲットが“自分用だ”って思えそう?」「どんなパッケージだったらターゲットにとって便利?」など、さまざまな角度から問いかけることで、少しずつ商品のアイデアが具体化していきました。また、企画内容に関する情報検索に限ってスマホの使用もOKに。ターゲットのニーズや関連する商品の先行事例を検索することで、アイデアが出てくるようになりました。(「スマホで遊んでしまうのでは?」という心配もありましたが、そんな生徒はいませんでした。)

●プレゼテーションの時間はしっかり使い切ること

最後の1コマは、1グループ3分間のプレゼンテーションの時間。クラス内で投票しあい、優勝チームを決めることにしました。3分間は、自分たちの商品のPRの時間としてしっかり使い切ること!用意していた発表原稿だけでなく、オーディエンスからの質問に答えたり、アドリブで対応したりと、なんとか3分間を保たせ、アドリブで出てきたアイデアの方が実はよかった、なんていうグループもありました。時間に余裕があったクラスでは、「リベンジしたいグループ」を募って追加プレゼンも。他グループのプレゼンがどれも「自分たちよりすごい」と感じられたようで、どこに投票したらいいのかに迷う生徒も少なくありませんでした。

●高校生は何を学んだの?

授業終了後のふりかえりシートでは、以下のような声が出てきていました。「むずかしかった」という一方で、実社会ではこうしていろいろな商品が考えられているのだという気づきを得ている子も多く、「実際の商品開発ではどんなことをやっているのか知りたい」という声も出てきました。

【生徒からの声(抜粋)】

・1から考えることの大変さに気づいた。そして新しくみえてくるものがありました。
・自分たちがいつも何も考えずに食べているお菓子は、多くの人がすごい時間を使って作られているんだなと思いました。もともとあるものを変えて作るのではなく、1から何かを作るのはとてもむずかしいと感じました。
・自分たちで考えていると、どうしてももうあるようなものしか思い浮かばなかったから、新しいものをどのように生み出しているのかを知りたいなと思いました。
・ターゲットの人物像やどういう生活をしているのかを具体的に考えて、困っていることや欲しいものを考えるのが初めてで、印象に残った。今回は3週間の期間内で決めたけど、実際の商品開発の会議やプレゼンでは、もっと時間をかけてたくさんの意見を出し合って決めていることがわかった。
・売れるように考えるってことは、とても難しいことがわかった。アイデアを出すのも、自分ではなく、他の人など年上の人のことを知らないといけないことがわかった。値段とか適当に決めてしまったので、利益のことも考えないといけないので、そこらへんをもっと知りたいと思った。
・コンビニであたりまえに買っている商品は、誰かが沢山の時間をかけて考えているんだなと思ったから、買ったらその商品の工夫されているところを気にしてみようと思った。
・今後、アイデアを浮かばせたりするには、調べたり実際に感じてみることが大切だと思いました。
・否定しないむずかしさを学んだ。
・発散するときに、思い切って後のことを考えずにやった方がいいなと思いました。
・大人たちがしている本格的なプレゼンテーションはどのような感じでやっているのかなと思いました。
・発表についてのやり方や説明の口調、言葉づかいなど、将来、会社で使うと思うのでもっと知りたいと思った。
・ふだん話したことがない人たちと話し合いをするのはむずかしいことがわかった。人によってたくさんのアイデアがうまくことがわかった。
・みんなでアイデアを出し合うと、ひとつのアイデアがとても良くなっていくことが印象的でした。

【先生からの声(抜粋)】

・生徒たちが社会に出て、働く様子を想像することができた。
・相手(ターゲット)の立場を考えて活動できていた。相互理解に繋げられると思いました。
・思っていたよりも、プレゼンや話し合いができていました。
・コンビニスイーツという題材がよかった。

※この授業は、東京都「都立高校生のための社会的・職業的自立支援プログラム事業」の一環として実施しました。
※PBL型の授業のサポートについては、問い合わせフォームからご相談ください。

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