キャリア教育とは、キャリア官僚など、エリートを育てるものですか?
自分たちの生きていく道を、発達段階に応じて考えていけるようにするための教育です。
キャリア教育は、上級的な仕事に就くための教育、エリートを育てるための教育と誤解している傾向が社会にはありますが、そうではありません。
文部科学省は、キャリア教育を「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義しています。
キャリアとは、人が生きていくなかで担っていく様々な役割・仕事などの足跡のことを言います。自分という軸に「働くこと」「生きること」「学ぶこと」をつないで、社会に向けて主体的に進んでいけるようにする、つまり、自分たちの生きていく道を、発達段階に応じて考えていけるようにする教育がキャリア教育なのです。
キャリア教育と進路指導はどう違うのですか?
進路指導は、具体的に必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育です。
キャリア教育と混同されるものとして「職業教育」という概念があります。「職業教育」は、「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育」とされています。
進路指導は、具体的に自分に合った学校や職場に進んでいくために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育です。
キャリア教育は、将来の職業を決めるものですか?
社会に向けて主体的に進んでいけるようにするための教育です。
キャリア教育は直接的に職業を決めるものではありません。キャリア教育は、社会に向けて主体的に進んでいけるようにするための教育です。
最近の子供たちから「なぜ勉強しなければならないの?」という言葉を聞くこともよくあると思います。教育の大きな課題として、「授業が社会と直結していない」ということが挙げられます。
例えば、社会人から自分が歩んできた道、経験したことなどを聞くなど、学校の授業にリアルなエッセンスを加えることで、授業が社会と直結していることが分かってきます。様々な体験を通して学校と社会をつなげ、学ぶ意欲を向上させる教育がキャリア教育です。
小学生のうちから、将来の仕事を決めなくてもいいのではないでしょうか?
主体的に活動し、役割を知り、他の人たちの役に立つことを学ぶことが大切です。
小学生には小学生としての発達段階に合ったキャリア教育があります。
例えば学習活動以外でも、家庭でのお手伝いや、学校での係活動、縦割り班活動、地域でのボランティア等を通して、自分が主体的に活動し、自分の役割を知り、そして他の人たちの役に立つことを学ぶことが大切です。
学校では読み書き計算ができればいいのであって、体験活動などは必要ないと思うのですが?
何で勉強をしなければならないの?という疑問を解決させます。
もちろん学校においての基礎的学習は何よりも大切です。しかし、何で勉強をしなければならないの?という疑問が解決しなければ、学習意欲に結びつくことは難しいと言えるでしょう。
キャリア教育などを行うより、学力をあげることのほうが先だと思いますが?
社会が間近に感じられることで、学ぶ意欲や学力も向上します。
TIMMS(国際数学・理科教育動向調査)の調査では、日本の中学生は、何のために学ぶのかという問いに対して、いい学校に進学するためと答えた割合が多く、社会に出たときに役に立つからという答えを上回っていました。学びが社会と密着していないことが分かります。
その結果、若者世代での早期離職や、フリーター・ニートの増加という問題を引き起こしています。とても頑張って勉強してきたのに、社会の中では適応できないという若者が増えてきているということです。
確かに学力向上は大切ですが、それと同時に、児童生徒のうちから、社会の仕組みが授業や生活の中に入り込み、日常的に社会が間近に感じられる教育を行っていくことが大切です。またそれにより、なぜ学ぶのかという疑問も解消され、学ぶ意欲とともに学力も向上していくでしょう。
キャリア教育を行いたいのですが、どこに相談すればいいですか?
ぜひ、全国のキャリア教育関係団体にお問い合わせください。
キャリア教育に興味があるという教育関係者の皆様、キャリア教育で児童生徒たちを支援していきたいと考えている地域・産業界の皆様、その橋渡しをするのがキャリア教育コーディネーターです。
キャリア教育コーディネーターは、学校の現状や希望を聞きながら、学校に合うキャリア教育支援人材を紹介したり、プログラムを開発したりします。
また、地域・産業界の皆様のニーズに合ったキャリア教育プログラムを開発し、学校とつなぎます。
ぜひ、このホームページにある、全国のキャリア教育関係団体にお問い合わせください。
学校や、企業、地域はがんばっているのですが、保護者は何をしているのでしょうか?保護者の教育が先だと思うのですが。
「地域の子供は地域が育てる」という目線も大切です。
核家族化や少子化が進み、子育ての相談ができなかったり、親としての経験が少なくなったりしています。どうやって子供を育てたらいいのかと迷ったり、悩んだりしている保護者の皆さんも少なくありません。子育ては家庭が基本ですが、学校や地域の力を合わせて進めていくことが求められています。
地域との関係性が薄れてきている現代ですが、それを少しずつ改善していき、「地域の子供は地域が育てる」という目線で子育て支援が行われることも大切です。
学校や子どもたちの役に立ちたいと思っているのですが、どのような活動がありますか?
学校サポーターとしての活動は様々あります。
地域の力を借りて教育活動を進めていこうという学校は、増えつつあります。
ご自身の経験を生かした活動をしてみてはいかがでしょうか。
学校サポーターとしての活動は様々あります。例えば、話すことが好きな方は本の読み聞かせ、本が好きな方は図書室整備、園芸が好きな方は環境整備、手芸が好きな方はミシンサポート、料理が好きな方は調理実習サポート等々。
また、社会人講師として、仕事について語る、海外経験の話をする、戦争体験の話をする等の活動もあります。
さらに、調整力がある方であれば、キャリア教育コーディネーターの道もあります。
学校や教育委員会にキャリア教育プログラムをやりたいと話しに行ったのですが、お声がかかりません。どうすればいいですか?
そういう時こそ、キャリア教育コーディネーターにご相談ください。
学校だけに関わらず、初めてのことを導入するには、様々な準備が必要です。いくらご自身にやりたいという気持ちがあっても、その学校の教育計画にふさわしい内容なのか、学校の授業のどこに入れていくか、またその効果はどうなのか等、学校は様々な懸念を持ってしまいます。学校の授業はそれだけ綿密な計画のもとに進められているのです。
そういう時こそ、キャリア教育コーディネーターにご相談ください。キャリア教育コーディネーターは、学校や教育委員会とのパイプを持っていますし、皆様のご相談に応じて、アドバイスすることもできます。
業績が悪いので社会貢献関連の予算が少なくなりました。どうすればいいでしょうか?
予算をかけることだけが企業の社会貢献ではありません。
社員ボランティアを募集して、その人たちが学校に出向き、キャリア教育プログラムを実施している企業もあります。
また、社員研修の一環として教育貢献を実施している企業もあります。
ある会社では、部署を超えて若手社員がチームを組み、自らの会社や仕事を題材にしたキャリア教育プログラムを実施しています。このプログラムを実施するために授業を組み立てる活動が、授業に参加した社員に課題解決能力やコミュニケーション能力の向上をもたらせ、部署を超えたチームワークづくりの促進に役立っています。